英語の日常会話に必要な単語数は3000語程度という考えが主流
頻出単語1000語をグループで覚えれば日常会話は可能です
会話で使う頻出英単語の数
英語と聞いて、なんとなく苦手意識を持つ人が多いのは単語を覚えることではないでしょうか。
「一つずつ覚えていたのでは日が暮れる」そう思ったことはありませんか?
イギリスBBCが2018年5月に”News”ページに掲載した”How many words do you need to speak a language?”という記事があります。
これとともに掲載された「頻出単語1000」には多少難易度の高いものも含まれますが、ほとんどが基本的な単語です。
さて、私たちが義務教育と高等学校の教科書で目にする単語の数がどれぐらいかというと、約3400語。
そのため、「頻出単語1000」の単語のほとんどはすでに知っていることになります。
単語分類法
さきほどの記事に登場する言語学者が興味深い [単語分類法] を公表していますので、ご紹介したいと思います。
言語学者であるPaul Nationは著書「Learning Vocabulary in Another Language, I.S.P. Nation, 2001」で、単語の分類法を紹介しています。
そのなかで、単語の分類にはレマ(Lemma)とワードファミリー(Word Family, WF)という概念を用いるとしています。
つまり、上述の「頻出単語1000」の見出し語1000語も、実際には語数が数倍になっています。
つぎで例をあげていますので、ご覧ください。
このことから、日常会話に必要な単語の数は、高校卒業までに覚えた単語の数とほぼ同じになると考えられます。
また、一つ一つの単語も品詞別に、あるいは派生語を加えることで何倍にもなります。
単語を覚える秘訣
さきほど登場した「単語分類法」のレマとワードファミリー。
これらの分類法をつかうと、一度に多くの単語を覚えることができます。
効率的な英単語の覚え方
それでは、それぞれの使い方をご紹介します。
[レマ] では、
[例]
(日本語の意味(1例)とそれに対応する英語の説明を付けています)
- wind【wínd】(名詞)
[意味は「風」 “a current/natural movement of air” ] - wind【waind】(動詞) – wound/winded, – winding
[意味は「たとえば、道が曲りくねっていること」 “something like a pathway winds when it twists and turns” ]
これらの単語は綴りが同じでも、別単語として数えます。
[別の例]
- fine【fáin】(形容詞)
[意味は「上質の、すてきな」”of high quality, excellent” ] - fine【fáin】(名詞)
[意味は「罰金」”money that someone must pay as a punishment” ] - fine【fáin】(動詞)
[意味は「罰金を科す」”to fine someone” ]
これらの単語は綴りも発音もすべて同じですが、別単語として数えます。
一方、[ワードファミリー] では、
[例]
(こちらには、英語の説明のみを付けてみました)
- infection【ɪnˈfɛkʃ(ə)n】(名詞) ”infection is infecting someone”
- infect【ɪnˈfɛkt】 (動詞) “to infect someone is to pass on a disease to them”
- infectious【/ɪnˈfɛkʃəs/】(形容詞) ”an infectious disease is one that can spread from one person to another”
[別の例]
- serious【sɪərɪəs】(形容詞) ”not funny, very bad”
- seriously【sɪərɪəsli】(副詞) ”not lightly or superficially”
- seriousness【sɪərɪəsnəs】(名詞) ”the state of being serious”
これらの単語をそれぞれ一つのグループとします。
[ 単語の説明文をあえて英語にしてみました。よく見ると知っている単語ばかりだと思います]
たとえば、このように見出し語を1つ覚えれば、数語を容易に関連付けることができます。
単語を一つずつ覚えるのは非効率的です。
また、肝心の英語の語感を鍛えることもできません。
こうした方法で単語に取り組むことで効率がアップすると思います。
必要な英単語数の比較
日常会話に必要な英単語数
ここまで日常会話に必要な単語数とその覚え方について見てきました。
基本単語を見出し語として、それに派生語を加えることで、覚えられる単語の数は何倍にもなることがおわかりいただけたと思います。
このページの最初で紹介した「頻出単語数」は約1000語でした。
これに派生語を加えれば、日常会話に必要な3000語はクリアできるでしょう。
ある程度、専門的な会話に必要な英単語数
それでは、さらに自分の趣味や仕事について多少専門的な話をしたいときの単語数はどれくらい?
そんな疑問がわいてきませんか?
たとえば、国内で実施される英語試験のうち、
- TOEIC 730~860点
- 英検準一級
これらのスコアの取得や合格に必要とされる単語数は、7,500語~9,000語の範囲と言われています。
このレベルの目安は、
- 社会生活における幅広い話題について会話ができ、明確かつ詳細に自分の意見を表現できる
- ビジネスで英語が使える
ということですので、「趣味や仕事について、ある程度、専門的な会話ができる」と大体一致しています。
英語ネイティブが考える必要英単語数
では、英語ネイティブが考える会話や文章を理解するために必要な数はどれくらいでしょうか?
先述のPaul Nationが考察した[How Large a Vocabulary Is Needed For Reading and Listening / 2006 The Canadian Modern Language Review]には、
英語ネイティブとの会話および文章を、何の助けも借りずに理解するのに必要とされる英単語数(ワードファミリー、WF)が示されています。
これによると、
- 98%会話を理解するには、6000語~7000語
- 98%文章を理解するには、8000語~9000語
ワードファミリーで、この範囲の単語数が必要としています。
これに対して、国内で実施される英語試験では、
- TOEIC 900点台を取るために必要な単語数は、10,000語以上
- 英検1級を取るために必要な単語数は、12,000語~15,000語
このように言われていますので、WFで換算すると、P. Nationの提唱する数にやや近づくのかもしれません。
これらのレベルでは、ニュース英語(英BBCや米3大ネット、など)や英文の雑誌(Time誌やNewsweek誌、など)も、なじみのある話題であれば、辞書なしでほぼ理解できるでしょう。
まとめ
このページでは、用途別にどれくらいの単語が必要になるかを見てきました。
ちまたでは、「そんなに単語を覚えてどうする?」といった議論もあるようです。
とくに必要がないのであれば、そうかもしれません。
個人的には、必要な単語数は目的によると思っています。
たとえば、
・簡単な会話や文章の読み書きをするのであれば、3000語~
・自分の趣味や仕事について多少専門的な話をしたいときは、7500語~
・英語圏の雑誌をななめ読みしたり、仕事や時事問題についてすこし踏み込んだ話をするのであれば、10000語~
といった具合。
あなたの目的に応じて、楽しみながら単語を増やしていってくださいね。